台湾の動物愛護活動家達は、人間用の薬が動物実験の対象となっているにもかかわらず、 伴侶動物に対する薬の制限があることはとても理不尽だと感じています。
2019年、 台湾地域内の犬猫の総数は230万匹を超えています。 新生児の減少とは対照的に、メディアでは、「毛むくじゃらの子達のほうが好まれる時代」などと表現されることもよくあります。台湾では毛むくじゃらの子達への薬の使用が制限されており、保護団体は彼らが薬を使用する権利を切望しています。 近い将来、まずは緊急治療に必要な薬を設定し、最終的には人間用の薬の使用と、 使用に適さない医薬品のブラックリストを作成することです。
「ペットは人間用の薬を使えない」ことが台湾では長年の問題です。問題の核心は、人間の医薬品と動物の医薬品の管轄が違うということです。人間用は厚生省食品医薬品局(以下、食品医薬品局)の管理下にあり、薬剤師が管理しています。一方、動物用は、農務省動物植物検疫局(以下、検疫局)が担当しており、 獣医師が管理しています。獣医師は20年以上に渡り、小型動物の治療に人間用の薬を使用してきました。犬猫の数が増え、医薬品の需要がますます増え、近年は薬剤師と獣医師の間で頻繁に摩擦がおきています。
最も激しかったのは、 2019年6月、薬剤師協会は獣医師に人間の医薬品を使用する権利を与える動物保護法は、薬事法よりも低レベルの法律だと考えたのです。 協会は法律の根拠を明確にし、改正することを求めました。犬猫への使用を求める597の人間用の医薬品の使用が完全に否定されました。
2021年2月現在、 検疫局によると、獣医師によるが使用する人間用医薬品の数が611に増加しています。 しかし、野良犬が怪我をして破傷風の注射が必要な場合、 それを入手できる場所がないことに動物保護団体は気付きました。 人間のすぐ近くで暮らす動物達は、人間と同様の怪我や病気にかかります。 そんな状況下で使用したい医薬品のなかでどれ程の種類の使用が認められているでしょうか。 使用制限は理にかなっているのでしょうか?
2021年2月3日、獣医師学会のTan Dalun会長、 動物保護監督組合のHe Zongxun事務局長、そして世界愛犬連盟の台湾代表Lu Yulunは、陳 亭妃議員の開いた調整会議に出席し、食品医薬品局と検疫局の職員に動物緊急医療の検討と対策を要請しました。
台湾の陳 亭妃議員(写真手前)は、 人間用の薬を犬猫たちのために使用することの障害となっているものを解決するために名乗りをあげました。 検疫局のDu Wenzhenディレクター(写真中央)と食品医薬品局のChen Huifang副局長は、 緊急医療システムの確立に合意しました。
検疫局のDu Wenzhenディレクターは、 獣医師が使用する611種類の人間用医薬品に加えて、検疫局は獣医師会が提案した 「動物治療薬品の一時的な代替品申請」 を随時受け入れると述べました。 専門家の検討会議を招集。 食品医薬品局のChen Huifang副局長は、 611種類の動物使用可能な医薬品は人間用医薬品の36%を占めており、 破傷風薬はもともと規制されており近年は世界的に在庫切れになっていると述べました。
動物福祉と緊急治療の必要性を考慮し、 検疫局ディレクターも食品医薬品局副局長も緊急医療システムの確立と、 全ての獣医師会との窓口設置の提案を承諾しました。
動物保護団体が目指す、使用に適さない医薬品のブラックリスト化については、 当面の間は実施が困難であるとのことです。 検疫局ディレクターはまた、「一たび規制が解除されると、 管理上の抜け穴を作る可能性がある」と指摘しました。
対照的に、アメリカでは、 ヒトおよび動物の両方の医薬品を食品医薬品局によって管理されているため、 獣医師によるヒト医薬品の使用を合法とする動物医薬品に関する法律(ANDUCA)が1994年には可決しており、 動物用医薬品に対する「ブラックリスト」が取り入れられ、 公衆衛生に影響を与える残留薬物を含む医薬品の使用が禁止されました。 その結果、 畜産動物への使用が許されなかった医薬品はわずか10種類にとどまりました。 犬猫など伴侶動物に対する医薬品のブラックリストはありません。 ヨーロッパと日本は獣医師使用の医薬品に、「動物用」と 「ヒト用」の表示わけがされており、 台湾食品医薬品局が懸念する「管理上の問題」はない。
動物達の安全な医療措置のために、 台湾の動物保護団体は、食品医薬品局の先進的慣行に従い、ブラックリスト以外のヒト用医薬品の動物使用が許可されることを、 食品医薬品局と検疫局に要請します。